■顔面神経麻痺の症状は
✓目が片目だけとじれない
✓目の周りが痙攣する
✓口が動きにくい
✓顔や耳や首が痛い(場合によっては激痛)
✓肩がこる
などから始まることがあります。
■原因は何?
顔面神経麻痺とは、12対ある脳神経の7番目にある顔面神経が、脳または脳から出てきて顔面に出てくる経路のどこかで障害されて起こる病気です。
神経の障害部位により、中枢性と末梢性と大きく2つのタイプにわかれます。
□末梢性顔面神経麻痺についての説明
末梢性の顔面神経麻痺は顔面神経という脳から頭蓋骨の中を通って顔の表面に出てくる脳神経に障害が生じたものをいいます。
顔面神経には、神経節という神経の分岐点のような部分が存在し、その神経節に潜んでいるウイルスが何らかの理由で活性化した際に神経を傷付け神経炎を引き起こしているという説があります。
また、原因のウイルスには、単純ヘルペスウイルス(HSV)や、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)や、サイトメガロウイルス(CMV)etc が関連していることがあります。
他には、外傷(けがや骨折)、腫瘍、手術、中耳炎・内耳炎、自己免疫疾患などが原因となることがあります。
一般に治療に関しては、できるだけ早く「as soon as possible」が原則であり、初期治療が最も重要です。
※完全麻痺とは、顔面神経麻痺スコア(下図)で10点以下の場合をいいます。麻痺の状態を顔の動きを含め10項目で評価します。
評価は4-2-0点で採点します(4-3-2-1-0点をつける評価法やトリアージ10点法などもあります) 。ほぼ正常の場合は4点、部分麻痺の場合は2点、高度麻痺の場合は0点とします。重症度判定にはこれまでの経験からいくつかの検査結果を組み合わせて行っております。
■治療
一般的に治療には、神経炎を抑制する為のステロイド薬(プレドニゾロン、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾンetc)と、ウイルス量を減らす為の坑ウイルス薬(アメナメビルetc)、神経に栄養を送る為のビタミン剤、末梢循環改善薬などを併用します。
■経過について
顔面神経麻痺は発症してから1週間は麻痺が進行していくことが多いです。1週間以上すぎても進行が緩やかかつ悪化していく場合にはベル麻痺やウイルス性以外の原因(腫瘍性など)のこともあります。そのため、発症後も定期的な受診による経過観察が大切です。また、初期の麻痺スコアが悪いほど、治癒には時間がかかる傾向があります。軽度の麻痺の場合は1か月以内に治癒することもありますが、完全麻痺の場合には1年数か月治癒に要する場合もあり、完全治癒に至らない場合もあります。
■後遺症について
早い人で1ヶ月くらいから後遺症が出現し、平均して、3〜4ヶ月で後遺症が出現しはじめます。
■後遺症のタイプ
○眼瞼下垂
瞼がおちてくる、視界が狭くなる。
○眼瞼痙攣
発症初期の麻痺が進行する場合や麻痺が改善していく場合に出ることがあります。
○拘縮
○病的協調運動
■後遺症に対してのケア
○ホットパック
顔面神経麻痺で動かなくなった筋肉の血行をよくし、筋肉のヤセや、拘縮の軽減をはかります。
1日目3回〜4回マッサージと共に行います。
○マッサージ
額、目の周り、頬、口の周りを500円玉の大きさくらいの円を描くように軽く指の腹をあてながら回します。
○眼瞼形成術 顔面神経麻痺の後遺症で眼瞼下垂をきたすことがあります。これらの後遺症に対しては眼瞼形成術で改善が得られる場合があります。手術をうけられる場合は形成外科専門医に紹介させていただきます。
他のQ&A
Q.電気刺激や、低周波マッサージはしてもよいですか?
A.顔面神経麻痺の後遺症を誘発したりするおそれがあります。オススメしません。
Q.鍼治療はしてもいいですか?
A.鍼治療で改善する場合がいくつかの報告がありますが、重症例では改善するエビデンスはまだありません。
Q&A
視力が落ちてきたように感じるのですが?
顔面神経麻痺により兎眼となり、角膜炎をきたすことや、閉眼できないことで、角膜の曲率半径が変化することがあります。角膜炎や、乾燥予防として点眼薬や、眼軟膏を処方し経過をみることになりますが、症状によっては眼科受診をすすめます。
Q&A
発症してから数年経ちますが、良くなりますか?
現在顔面神経麻痺に対しての初期治療として、ステロイド治療などは発症1ヶ月以内がコンセンサスの得られている範囲です。後遺症が出てきた場合にも、進行や悪化を改善させる治療はまだ確立されておりません。
眼瞼下垂に対する治療や、静的再建、動的再建治療には専門の医療機関でしか行っていないものもあります。気兼ねなくご相談ください。
待ち時間軽減のため、当院にはじめて来院される方も順番予約システムをご利用いただけるようにいたしました。