新型コロナウイルス感染症後の嗅覚障害について
まず嗅覚障害については、
□呼吸性嗅覚障害
□嗅粘膜性嗅覚障害 (嗅神経細胞)
□混合性嗅覚障害 (上記の組み合わせ)
□末梢神経性嗅覚障害
□中枢性嗅覚障害
があります。
においの説明
まず、身の回りにはいろいろなにおいが存在しますが、説明をわかりやすくするために、
あらゆる臭いが、5大においの元素からできているとします。(イメージです。本来は396種類のにおい受容体があります。)
むらさき色が青色と赤色をまぜてできるように、においの要素もこの5大においの組み合わせてできているとします。(下図のイメージ)
正常時のにおいを認識する流れ(下図)
においの物質は、鼻の粘膜の嗅細胞(におい受容体がある)を含む嗅上皮にとりこまれ、嗅球、球神経をへて、脳のにおい記憶のところにたどりつき、においを認識することができます。(ぶどうを例に挙げています)
しかしながら、新型コロナウイルスをふくむウイルス感染症で鼻粘膜の嗅上皮がダメージをうけ上記の流れがうまくいかなくなる場合があります。
【ダメージが少ない場合】
嗅上皮―嗅球への影響が限定的の場合、嗅覚低下がおこり、におい元素が部分的に認識できなくなり、下図のようなメカニズムで異臭がしたり部分的ににおいを感じにくくなったりします。しかし、完全ににおいがわからなくなるようにはなっていない状態です。
【ダメージが大きい場合】
嗅上皮、嗅球などのダメージがおおきいと、脳の記憶はのこっているはずなのに、においを嗅いでも、においが全くしなくなってしまいます。
イメージ図
嗅覚リハビリとは?
あらゆるにおいは、においの元粒子をもとに構成されているという考えにもとづき、あるもののにおいがわからなくなった場合も、そのにおいを継続して嗅ぐことや、それとよく似ているにおい、または、違うにおいを嗅ぐことで、においの刺激と記憶を結び付け、回復させるリハビリテーションです。
まずは、簡単なところから始めましょう。コーヒーやお茶、みそ汁などみのまわりにあるもののにおいなどを嗅いでみてください。もうすこし本格的にするには、アロマの香りを嗅ぐことなどもすすめられます。
嗅ぐにおいは強いにおい(高濃度)の方が効果が高く、より多くの種類を用いて、長期間おこなうことでさらに効果が高まったという報告もあります。(AltundagAらLaryngoscope 2015 ; 125: 1763-1766)
薬物療法
嗅覚低下にはいろいろな原因があり、それぞれの原因に応じて、嗅覚障害の治療を行います。
一般的には、
□点鼻ステロイド薬
□漢方治療
□亜鉛製剤
□ビタミン製剤
□代謝改善剤
など多くの種類が使用される場合もあります。
また、新型コロナウイルス感染症から続発する副鼻腔炎には、副鼻腔炎の治療が必要な場合もあります。
先天性の嗅覚障害や加齢による嗅覚障害などには、なかなか効果がでにくい方や、全く効果がでない方もおられます。
もちろん上記の治療をあわせて、嗅覚リハビリはいずれの場合でもすすめられますし、すぐ開始できることです。ながくつづく嗅覚障害で悩まれる場合はまずお近くの耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。